スキージャーナリストの岩瀬氏から世界選手権の現地レポート4「男子ラージヒル」です。
FALUN TT STORY2015
IWASEレポート その4 写真/文 岩瀬孝文
『それは痛恨の風なのか』
公式練習では130mを普通にマーク、本番1本目おおいに期待のラージヒル個人戦。
着地を決めて129.5mで第7位。表彰台は充分に射程の範囲だ。
風…。2本目119.5mで静かに降りる。
最終順位は11位、それでも日本選手の中ではトップ。
「話、かんべんして…」
葛西選手からそういうサインがきた。
基本最低限のテレビインタビューをすませて、重い足取りでケーブルへ。
ボランティアスタッフにせがまれた2ショットもうつろ。アマンが、まあ、しょうがないからさ、なあ、ノリちゃんみたいな乗りで顔をはさむ。一瞬だけ、場が明るくなった。
今日はコメントはいらない、心中を察すればこそ。だから、しずかに見送る。
着地すぐのゲートを抜けたフィニッシュエリアでは長椅子に腰を下ろし、2本目の怒りをぶつけるわけでもなく、紐をとき、シューズを並べてバッグにしまいジャンプスーツを脱ぐ、その一連のルーティンワークをしながら『ふう』と、ひとつ大きくため息をついた。
「ここはあれですよ、技術勝負の台ではない。単に風の影響が強い台ですから」
足早にやや吐き捨てるように語る横川チーフコーチ。良い風をもらったのは小林潤志郎のみ。
竹内択も伊東大貴も突き落とされて後退。怒りは少々、けれども、しょうがないと。
しかも葛西選手は、前年には五輪後に膝を痛めたいわくつきの台ファルン。
飛んでいてなぜか爽快感がない台、気分がよくない台、いらいらする台。なんとでも形容されよう。要は好きじゃない台なのだ、ここ。私を含め。
もう、ここは日本選手に相性の良くない台でいい。
かつて原田選手や斉藤選手が勝利したのはオールドスタイルで蹴り上げのタイプ。
これは見事なまでに改修工事された。昔ながらの銅山で栄えた街の裕福な、往時の時勢にものをいわせて建立した岩盤をくりぬいた荘厳さはあれ、いまひとつ気分のよろしくないシャンツェである。
いつも、ここでは何か突き上げてくるものがない。葛西選手のその言葉どおりである。
気を晴らして27日の団体戦、ベタに言えばチーム一丸となって。
そして今宵は、打ちひしがれた心の癒しに、たまにはグラス一杯だけのレッドワインはどうだろう。ボブ・マーリーのリズムに乗って、しとやかにでも。
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