シーズンを振り返る岩瀬氏のレポート「第3弾 新星、伊藤有希その限りなき挑戦」です。
本当に監督に、ご飯を御馳走になれるんですか?
その言葉を発してから有希は、しばし、こうべを垂れた。
「いえ、シーズン中は、お忙しいのに、いつでもこと細かに教えていただきました。それが逆にやる気になったので、ぜひ私から御馳走させてください、そうします!」
きっぱりと、そう言い切った。
普通の選手であれば、やった、ラッキー、なのであるが、こういうところまでストイックさが垣間見られるW杯個人総合第3位の伊藤有希(土屋ホーム)であった。
これくらいは葛西監督に甘えて、札幌市内で美味しいお寿司でも連れて行ってもらえればいいのに、などとやぶさかに考えてしまいそうだが。それをよしとしない彼女、いつでも感謝の気持ちを忘れない。
これが、上昇志向の表れともいえた。
とはいえ食事会になれば、五輪銀と銅メダルを獲得して土屋ホームの部長に就任したW杯個人総合5位の葛西紀明監督兼選手だ。きっと、『大丈夫だ~』と太っ腹になってくれるに違いない。
「自分には、まだまだ足りない部分があります。社会人1年目だからとか、これくらいで良いとは思いません。ソチ五輪も1本目は失敗ジャンプで悔しかったです。それに表彰台がかかっているなら、しっかりとモノにしたい。そういう強さがほしい…」
W杯女子ジャンプの終盤戦、一歩ずつ階段を昇り、機運さえ高まれば初優勝のポジションまでに到達しそうなところまでやってきた。
だが、最終戦も強者高梨に差をつけられての2位表彰台に終わった。
結果としては、19戦中(18試合うち欠場2試合)、2位3回、3位2回、4位が2回。ふたけた順位は開幕11月当初の2回のみという好成績を収めた。
シーズンの後半、そのジャンプも試合が進むにつれ、みるみる固さが取れていった。そして柔らかく風を受け、ぐいぐいと伸ばしていけるイメージが醸し出されてきていた。
「私は、もっと伸びたいんです。だから男子がいるチームに入部したのです。それで夏合宿からしっかりとした筋力トレーニングを行ない、ここまできました。でも、まだまだ足りません。さらに、とことんやるべきなんです」
そんな話を聞いていると、故障をともなうオーバーワークが気になるところだが、そこは葛西監督と、チームトレーナーの目が光っているから安心であろう。
勝つためにはアプローチスピードを高めること、さらに、どのようなシチュエーションにおいても、ビシっと決めるテレマーク、勝利を得るためにはそうでなければならない。
「いっつも、葛西監督には、そう言われ続けていますから(笑)」
ようやく表彰台の緊張と余韻も醒めたのか、安堵の表情にうって変わる。
さて、来季はどこまで成長をみせてくれるのだろう伊藤有希。
日本女子の2トップとして正々堂々、列強の海外勢にフルアタックだ。
文・写真/岩瀬孝文
Photo & Text: Yoshifumi Iwase
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土屋ホームスキー部 宛て
宛名は、選手名でお願いいたします。
先日、サイン会でお会いした有希選手に
「ゆうきちゃん、、とってもスラッとしているのね~」
そんなことを言った私でしたが
このレポを読ませていただいて
あー、”ゆうきちゃん”ではなく「有希選手」なんだなーって。
葛西監督のお食事ご馳走、そうでしたか。
うん、予想外の展開でした。
またスタートしたシーズン、ぜひ頑張ってほしいです!
でもまた今度お会い出来たら”ゆうきちゃん”って呼ばせてもらいます。
本物の彼女はやっぱり可愛いお嬢さんですから(*^^*)