第2戦クーサモ大会(フィンランド)「完走の意義とは」
文・写真/岩瀬孝文
今日こそちゃんとしたジャンプを、そして後半のクロカンで上位に入る。それが高橋選手のやるべきことだった。が、いつもながらのクーサモだ。
朝から横殴りの風でどうみても飛べる状況ではない。それでは試合は?前日の予備ジャンプの成績をスライドさせて、その順番で走るという。というと高橋選手は46番スタートだ。これでは開き直るしかなかった。
得意とする前半ジャンプで上位につけて、後半のクロカンはベテランの駆け引きをしながらじわりじわりと順位を上げてく。それが高橋選手のスタイルなのだが、最初から後方に位置している。
であれば複合競技をとことんまっとうしようではないか。
その思いが頭の中を駆け巡った。僕は複合が好きなんだ。高橋はなかなかフィニッシュに帰ってこなかった。
まさか途中で止めてはいないだろうか、と、少し心配になってきたが、遠くのカーブあたりから拍手が聞こえてきた。彼は、ゴール前ストレートのど真ん中を滑走してきた。
ああ、最下位の順位だが、これは実に楽しそうにグイグイと走ってきた。そして赤いフィニッシュラインを切るときに両手でガッツポーズを決めた。
ノルディック複合をよく知るスタンドの観衆からは、よくやったとの意味合いの拍手が続いた。
それは、かつて高橋選手がラハティW杯で初優勝そして連勝したことを覚えている地元ファンからの、ベテラン選手に送る暖かい拍手であった。これだからノルディック複合種目は面白い。頑張る選手に敬意を表する、それこそが真のスキーファンであろう。
フィンランドとはそういう国だ。高橋は、堂々とクーサモの距離コースを走りきった。順位なんか関係ない。彼の表情はとても満足そうだった。
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