スキージャーナリストの岩瀬氏から世界選手権の現地レポート5「男子団体」です。
FALUN TT STORY2015
IWASEレポート その5 写真/文 岩瀬孝文
『次のラハティ世界選手権ではまともに飛びたい』
「有希にはね、男子ジャンプのような前に進むシルエットのジャンプをしてもらいたくて。他とは違う、こう勢いのある」
笑顔がみえたのは教え子の伊藤有希のことに触れたとき。
それまではファルンの台を飛ぶたびにシニカルな表情をみせ、淡々としていた葛西紀明。
ひとしきり報道取材を受けた後にはボランティアスタッフさんにお握りの差し入れの感謝と子供さんへの握手、日本ファンの方々へのサインと、まめに動き回った。
そしておもむろに口を開く。
「メダル、取れなくてやるせなさがあり、応援して下さる皆さんにも、ちょっと…。ただ、チームはね、頑張りました。それに今日は2本ともいいジャンプでしたよ。やはり風ですね、自分以外の選手達にも」
とてつもなく技術あるジャンプを見せてくれた葛西。
「この先は、もちろんW杯優勝を狙い続けます。それにこの前のビケルスンで、250m超えを見せつけられたので、よし、それを超えてやろうと(笑)」
こうでなくてはレジェンドにあらず。
「有希はW杯で4位から一歩ずつ上がってきて銀メダル。もう、うれしくて自分のことのように。それで涙、出てきちゃって」
うるうるきていた、あのときのカサイだ。
今回、つぶさにジャンプ全試合とクロカンや複合を観ていてわかったことがあった。それはチケットの売れ行き。隣国から大型バスを連ねて大挙してやってくるノルウェー応援団の存在。それはクロカンで人気選手ヨハウグやら筋肉隆々のビョルゲン、ノルトグのスピードは圧巻なのだが、ノルウェーのジャンプでここまでの躍進は?
スウェーデンはジャンプと複合にまったく興味がなくクロカンだけが勝てばいい。では、チケットはどうさばく。そう、あのNORが買い求め、好ましい関係が成立だ。
一日に3試合を重ねるという異常なスケジュールも観客誘導のためなのは了解していた。でなければ観客席はがらがらになる。そこに何らかの機微がありそうであった。
あれだけ風が荒れると、まともな試合は臨みにくいジャンプ。
日本は混合団体の表彰台でよしとして、なのであろうか。
風の影響か、フロイントの143m転倒扱いに、良い風すぎてアマンは瞬時に手を広げてすっと安全着地。あるいは下の吹き流し3本の凪。イライラがつのっていた日本チーム。
だが、いつものW杯にみられる『風が』との言いまわしを一切、口にしなかった葛西紀明。
そしてチームの面々も、これは偉かった。
「そうですね、あの、もう、ここでやんなくてもいいですよ世界選手権。20年に一度くらいでいい(笑)」
葛西選手から、ひとつ本音が。
昔から、いびつな激しい風にあるファルンというのは、よくわかっていた。
フォクトの栄光に始まり強者フロイントのドイツが最後になぜ5位なのだろう。はたまた
うっぷんのたまっていたオーストリアが2位。しかも4本もいい風のシュリレン。
チケット完売は大会の成功そのもの。幾多のメダルを持っていった冬の王者ノルウェー。
ではあるが、夢と希望は奪ってほしくない。
メダルは伊藤有希と混合団体。それに続けと勢いに満ちあふれた日本。だが、そういう状況があるとすれば、果たして?
では、もっとジャンプに承継のある地でやろう世界選手権は、である。
そこで2017年開催のラハティ(フィンランド)。
かつて、W杯複合では地元の強豪ハンヌ・マンニネンを退け、2連勝を飾った高橋大斗選手。地元ひいきはあれ称賛された。さらにジャンプにかける情熱は歴史的なもの、素晴らしいものがある。
とくにラージヒルは強風があたるが、葛西選手はきっちりと飛べる台。2年後にはここで悔しさを晴らし納得のいく良好な試合といこう。
そして、その先に2018冬季五輪が控える。弾みをつけよう聖地ラハティで。
颯爽と葛西紀明、いまだ伝説の現役選手として。
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岩瀬様
「ボランティアスタッフ」です。選手の皆様と素敵な写真を撮って下さって有難うございました!
ビョルゲン選手ってなぜあんなに筋骨隆々なのでしょうか?女性なのに凄いですよね。