
岩瀬氏のレポートで振り返る2013-2014シーズン第5弾!「心晴れやかな最終戦 プラニツァ個人戦」です。
	前夜からザンザン振りの雨、ジャンプ撮影もずぶ濡れを覚悟する。
	日曜にもかかわらず観客はいつものフライングに比べれば半分から6割くらいであろうか。
	でも、わかる。狙っているのが。3日目でも。
	 
	眼がきらりと光るカミカゼ・カサイ。
	「ここのバッケンがほしい…。あたりまえじゃないですか(笑)」
	期間中、快活にそう応えていたレジェンドだった。
	その着地のとき、見ていて微笑ましいくらいの"粘り"にあふれていた葛西紀明。
	 
	それもそうだ、かつてのプラニツァにあったラージヒル台において147.5mという、今後、絶対に破られないバッケンレコード(最長不倒距離)を、もう15、6年に渡って保持していたのだ。
	実はプラニツァのLHシャンツェは、老朽化のために50~60mあたりのランディングバーンに大きな穴が開き、朽ち果ててしまい、それ以来W杯は開催されていなかった。
	 
	試合は雨の中、無風の1本目、それは勢いにあふれながらも安定した飛行であった。
	2本目は勝利をと願うが、ややバックの風だったのか。それでも悠々の130m超え。
	笑うのでもふさぐのでもなく、シーズンをまっとうした充足感が、フィニッシュゾーンに満ちる。
	 
	「これが今季最後の試合だと思うと、ちょっと安定路線でしたかね」
	にこやかに本音を語る。
	大量の雨に濡れた不安定で柔らかいランディングバーン。であれば安全性第一のランディングともなろう。
	いいじゃないか、カサイ。そんな観衆の暖かい風がインサイドまで届いてきていた。
	 
	優勝は逆転で地元のプレフツ(スロベニア)。地元観衆の大声援をタフに受け止め、入ってきた。熱狂しまくる会場。いつまでも歓声が鳴りやまず。
	 
	表彰台には、フライング個人総合第2位のイエロー表彰ビブをつけた葛西選手が。それを待つ間、強者シュリレンツアウナー(オーストリア)と仲良くひとつの傘に収まっていた。
	「あと、1試合やっていれば逆転優勝できていたのに~」
	そう悔しがることしきり、負けず嫌いそのものだ。さすが、勝負にかける意地がある。
	 
	個人総合は、急速に追い上げてきた勇者バーダル(ノルウェー)に抜かれて第5位とひとつだけ後退。
	「ここまでくれば4位も5位も一緒でしょう、ねっ(笑)」
	しごく安全に飛び終え、ジャンプをしっかりと仕上げて今季を締めるそのものだった。
	 
	試合後いつものように、応援してくれたファンへのポストカード配りとサインやら握手などへと向かっていった。
	それこそ流暢な英語でファンに語りかける親しげな交流の図であった。
	 
	なんとなく、そこに、すうっと肩の荷が降りたような葛西選手の丸い背中が見えていた。
	W杯最終戦 第29戦 プラニツァ大会(スロベニア)
	1本目134.5m ウインド‐0.06 133.3(5)
	2本目133.0m ウインド 0.05 134.5(5)  Total 267.8 第5位
	 
	個人総合1062点 第5位
	フライング個人総合第2位
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