スキージャーナリストの岩瀬氏から世界選手権の現地レポート3です。
FALUN TT STORY2015
IWASEレポート その3 写真/文 岩瀬孝文
『ここで銅メダルの持つ意味とは』
昨日もそうだった。
ノーマルヒルの上の風は、あの青い防風ネットを激しく揺らし、中断だとおもいきや、下3本の吹き流しは凪(なぎ)!
「あんまり好きなジャンプ台では、ないんですねここ」
めずらしくシャンツェの好みを口にした葛西紀明。
「なんか、ここで燃えてくるような、こう、突き上げてくるような気持ちがないんです。なぜか、わからないんですが」
けっして疲労感ではない。飛んでいて、気分がよいのか否か。シンプルに言えばそれだけなのだが。
「きのうの一発の衝撃…」
ここで衝撃という比喩を使う。
あれは、サッツ後の急激なバック風に加えて、吹き流し下3本の凪。他の有力選手の誰が飛んだとしても同じ状況。まして90mへより近づけていった葛西の技術力をほめるべき。
ショックでも何もない、ただ、それだけだった。
ひとしきりの表現に引きずられることなかれ、あれはしょうがないのさ。それでいい。
「今日は、強敵オーストリアは勝てたのでよしとします。どこのチームが落ちてもおかしくない状況だったので。それで、一呼吸おいてラージヒル。マシントレで少し身体に刺激を入れて、万全にして望みます」
淡々と語る横川チーフコーチ。手応えありだ。
ところがミックス団体の表彰台3位銅メダルでも、ひとつ表情がさえない伊藤有希だった。
「もっと飛距離が出せると思っていたので…。私ひとりのミスが全体を引っ張ることになるので」と、話していて自然に目線が足元に落ちていく。
いや、有希さん、あなたは世界選手権銀メダリスト。胸を張り、前を向いて。思い詰めることはない。立派な混合団体銅メダリストだ。あのバルディフィエンメで泣きじゃくっていた頃から比べれば、ものすごい成長ではないか。
「まあ、いいから、今日は」
監督の表情に戻った葛西選手が、こっそりと一言、声をかけた。
「はい…」
でも、納得はいかないようだ伊藤選手。そこはまあ、いいんでないかいのメンタルで。
ドイツはフォクトとフロイントの固いリードが、ノルウェーは大応援団とメルビの健闘が輝いての金と銀メダルであった。
では日本チーム、ラージヒルこそ、すかっと飛ばしまくりたい。
ジャンプと複合選手がいないスウェーデンでは、称号『レジェンド』は封印していい。
昔のように、スキーとスキー間からの微笑みで、魅せてくれるような『カミカゼカサイ』の復活劇といこうではないか。
まだコメントがありません
〒060-0809
北海道札幌市北区北9条西3丁目7番地 土屋ホーム札幌北9条ビル
土屋ホームスキー部 宛て
宛名は、選手名でお願いいたします。
コメントを残す